優しい子

 父が倅を抱いていて、この子は優しい子になるよといった。

 それを聞いて素直に喜べず、優しいは優しいなりに色んな人にいいように使われて、裏切られて、苦労する。その上寂しがりのようでもある。

 そういうの、いいから、苦労するくらいなら優しくなくてもいいので、適当に人生をちょろまかして生きてくれればとそれなりのおっさんになってからは思う。悪いことではないけれど、手放しで喜べない。

 その上人のいうことを聞かなそうな面構えで、これはもう世間様に揉んでもらって、それなりに挫折しつつ生きていくしかないんだろうなあこいつはと思った。

 少なくとも優しさは生きていく上でそれ程重要な要素ではない。そう思いながら無邪気に寝転がる倅を見たとき、少し悲しかった。