フィリピンのミンダナオ島のISこと

 昨日とか今日くらいからフィリピンのミンダナオ島でISとフィリピンの軍隊が戦闘状態にあって大変だみたいななってる件について。数年前まで仕事でよくフィリピンに行く機会があって、Facebookに少なからぬフィリピン人の知り合いがいるので、多分他の人よりフィリピンの事情には詳しいのではないかと思うので、少し書いておこうと思う。

当のフィリピン人は騒いでるの?

 というと、全然騒いでない。Facebookでは。でも彼らはとても熱しやすいので、もし国家的な問題となっていたら物凄く騒ぐと思う。因みに、この前のフィリピンの大統領選のときは凄かった。今回はあまり誰も何も言ってない。

 因みに、Togetterでは国民の知る権利がないがしろにされてるとか言われてて、最初はそうなんだ、それは困ったことだと驚きて、勢い込んで見てみたけど、するとどうでしょう、ことが起こってるのがミンダナオって聞いて驚くのをやめた。

フィリピンミンダナオ島マラウィ市がISに軍事制圧されているという事実

togetter.com

そして、ググると、Newsweekがこんな見出し。

特別リポート:アジアに迫るISの魔手、比ミンダナオ島の衝撃

www.newsweekjapan.jp

 

それはそれで本当に我々の知る権利は犯されていたり、日本は東南アジアには冷たいの?

 それは新聞では話題にならないかもしれないけど、割とみんな知らないだけでミンダナオなんてしょっちゅうイスラム過激派とフィリピン軍が鍔迫り合いをしているので、それはそれでめずらしいことでもない。ただ、今回はISが絡んでいて、それを報じないのはちょっと日本のマスコミはセンスがないなあとは思う。所謂、「知らせない権利」とか、東南アジアに対して冷淡であるということは多分なくて、ISが絡んでいなければああまたねみたいなものなのだと思う。ただ、でも、ISがミンダナオで大規模な事件を起こしたことを報じないのはそれはそれで壊滅的な取りこぼしであるとも思う。苟も日本とフィリピンは割と利害を共有する所も多いわけだから、こういう感受性はあったほうがいいかも。なくてもいいのかもしれないけど。

 それはそれ、メディアはメディアとして、役所はちゃんと仕事してます。

 海外旅行行く前に必ずチェックしないといけない外務省の海外安全ホームページを見るとミンダナオは渡航中止勧告が出てます。これってしょっちゅう変わるから、キャプっておくと、こんな感じ。

 f:id:S-ili:20170617001431p:plain

海外安全ホームページ: 危険情報詳細から本日分をスクショした

 ミンダナオの西半分がオレンジだけど、オレンジは渡航中止勧告です。この上に赤があって、赤は退避勧告で、これはイラクとかアフガンくらいしかなかったと思う。つまりこの程度には危険であるという風に政府は認識しているということです。

 

で、何が問題なの?

そう。今回大事なのは失礼だけど戦闘状態に陥ってることではなくて、ついにフィリピンでも大規模なISの大規模な活動が始まったことなんですね。

 もともとフィリピンの南部はインドネシアとかマレーシアとかいうイスラムの国々と近いことからも、フィリピンの国内でもイスラム教徒が多い。特にミンダナオ島の西半分はイスラム教徒が支配的であり、それと元からのイスラム過激派がずっと活動をしていた経緯がある。アブサヤフといった組織は聞いたことがあるかと思う。彼らは山に篭ってゲリラ戦を仕掛けてきたり、山賊行為や、誘拐を仕掛けてくる。

 そんなこんなでミンダナオは常に治安の不安を抱えながらも、ときにはそういった武闘派な方々との内紛が絶えないという背景がありました。

 それはそれで問題だけど、数年前にISが出てきたときに、ミンダナオ出身の友人が言うには、どうやらISが東南アジア方面にもきていると言うようなことを言ってた。もちろんその友人の彼はキリスト教徒であり、彼らはイスラムが嫌いなので、どうせいつものイスラム嫌いだろう思っていたけれど、今思えば彼は割と自分の故郷に差し迫った身近な危機として捉えていたのかもしれない。ただし、ミンダナオはいつもフィリピンにとってのイスラムや、領土的野心を全く隠そうともしないインドネシアとの勢力争いの最前線でもあり、いつも新しい組織が乱入してくる。

 今回新たにミンダナオに入門してきたISはこれまでのアブサヤフとフィリピン軍との間の拮抗した、ある意味で不安定な安定状態に陥るのか、それとも東南アジアの勢力図を塗り替える奇貨になるのか。よく分からないけど、ただ、そういうことは隣国のインドネシアも望んでいないので、珍しくフィリピンとインドネシアが協力できる点なんなんだろうけど、問題は、あいつらすげえ仲悪いんだよなあ。

 まあ今度ミンダナオの友達に聞いてみよう。

 ちなみにこういったこともちゃんと外務省の海外安全ホームページに載ってます。すごいな外務省。ただ書き方が硬いから読みづらいけど。

(3)テロ情勢
ア フィリピンには,イスラム系武装組織(アブ・サヤフ・グループ(ASG),マウテ・グループ,アンサール・アルキラファ・フィリピン(AKP),バンサモロ・イスラム自由運動/戦士団(BIFM/BIFF),モロ民族解放戦線ミスアリ派(MNLF-MG),ジュマ・イスラミーヤ(JI)等)や共産系反政府武装組織(新人民軍(NPA))等多くの過激派組織が存在します。イスラム系武装組織による無差別爆弾テロ事件,身代金目的の誘拐事件等が発生しています。また,NPAは「革命税」を徴収するとの名目で企業や富裕層に対する恐喝等を行っています。

イ 上記のイスラム系過激派組織の中には,ISIL(イラク・レバントのイスラム国)への忠誠を表明している組織が存在します。2016年,ISILはASGの幹部を地域の指導者に任命したと発表しているほか,「ISILフィリピン」を名乗る武装集団が自国におけるジハードの実施を呼びかけるなどした動画が公開されています。また,ISILは,フィリピン国内の事案に対する声明の発出をはじめ,他国の戦闘員に対しフィリピンへの集結を呼びかける動画を公開するなど,フィリピン国内組織との関係構築をうかがわせる事案が発生しています。ミンダナオにおける軍の掃討作戦においては外国人戦闘員の存在が既に確認されており,今後,これらの組織がテロ活動をさらに活発化させる危険性があります。
 テロ撲滅のため,治安部隊による反政府武装組織に対する掃討作戦が展開されている中,5月23日,ミンダナオ島西部,南ラナオ州マラウィ市(危険情報レベル3の地域)においてマウテグループメンバーらによる市街地占拠事案が発生しました。市街地に所在する州庁舎や学校などの占拠事案や当局による奪還作戦に伴う両者の交戦により,市民を含め100人を超える死者が生じるなど,混乱が続いています(5月末現在)。このような事態を受け,フィリピン大統領府は,同23日付で,ミンダナオ地域(ダバオ市ジェネラルサントス市等都市部並びにスールー州、バシラン州及びタウィタウィ州を含む)に対する戒厳令の発出を発表しました。戒厳令に伴う政府の措置の全容は,5月末現在,明らかとなっていませんが,都市部において市民の身分証明書の携行が義務付けられているほか、西ミンダナオの一部地域において夜間外出禁止令が発出されています。加えて、今後,在留邦人や旅行者の日常生活や滞在に影響が及ぶ措置が執られる可能性もあります。

海外安全ホームページ: 危険情報詳細より

 

フィリピンのこと

 ここで、しばらく行ってないけど、フィリピンのことをまとめとこうと思う。因みにいつでも行き先の国のことを調べるのは外務省のホームページが基本です。便利な時代になったものです。

 

 フィリピン基礎データ

1 面積

299,404平方キロメートル(日本の約8割)。7,109の島々がある。

2 人口

約1億98万人(2015年フィリピン国勢調査

3 首都

マニラ(首都圏人口約1,288万人)(2015年フィリピン国勢調査

4 民族

マレー系が主体。ほかに中国系,スペイン系及びこれらとの混血並びに少数民族がいる。

5 言語

国語はフィリピノ語,公用語はフィリピノ語及び英語。80前後の言語がある。

6 宗教

  注目するべき点は、面積と人口で、割とどちらも日本に近いことと、だけど、若い人が多くて、人口爆発している点。しかしそれでも人口ボーナスをうまく生かせていなくて経済が割と出稼ぎ労働任せになりがちなところ。と、あともう一つは、キリスト教国だけど、南部のミンダナオ島にはイスラム教徒が多い。これが割と色々と諍いの元になっているらしい。因みに僕の知ってるフィリピン人はみんなイスラム教徒が大嫌いです。その割にはルソン島でもそれなりにみたけど。溶け込んではないけど。

  ちなみに、フィリピンは島国で、たくさん島があります。

 多いので、北からルソン島セブ島ミンダナオ島くらい覚えておけばいいと思う。

 他にも、レイテ島なんていうのは太平洋戦争で重要な拠点だったし、イロイロ島なんていう面白い名前の島もある。

  北にあるルソン島は台湾に近くて、中国とも小競り合いをしているところで、首都マニラがある。マニラまでは日本から大体飛行機に4時間乗ると着く。最近はANAとフィリピン航空がコードシェアしてて、ANAでチケット買うとフィリピン航空の飛行機に乗せてくれます。あと、安全の関係からフィリピン航空はEUの空港に発着できないので、欧州系のエアラインはマニラの空港ではみられません。欧州からフィリピンに行こうとするとアジア経由か中東経由になって、とても辛いです。

 首都マニラはそれはそれは渋滞が酷いところで、空港を出て市街まで行くのに下手をすると1時間半くらい時間がかかります。電車なんていうゆとりな乗り物はありません。まあ割と親しみやすい汚いアジアです。ただ、子供連れてくときは誘拐に注意しましょう。基本的に親切な国民性ですが、それは仲間認定されると親切にされるだけで、基本モラルはなってないです。

 中部のセブ島は観光地で有名で、なんで観光地で有名になったかというと、セブの知事が徹底して治安対策をしたから犯罪率が下がり、それで欧州の旅行者を呼び込むのに成功したみたいです。ただ、メトロセブと空港のあるマクタン島と、セブの北にあるマラパスカ島以外は割とハードボイルドな感じで、セブも北部に行くと普通に山賊がいたり、殺し屋稼業をしている人もいます。

 セブもルソン島も最近はリタイアした日本人が身の回りの世話をしてくれるメイドさん付きの高級コンドミニアムをこういったあたりに求めてたくさん出てくるみたいです。ただ、日本人経営のホテルとかの半分は日本で食い詰めた稼業人のシノギになっていたりします。ちゃんと仕事してくれてたらいい訳ですが、反社と繋がりがないかというと断言できません。勿論我々の暮らしも友達の友達の友達くらいまで辿れば本職のみなさんにまで簡単にたどり着けるけど、それに気がついていないか、気がついていないふりをしているだけなわけです。だから法に触れない範囲で、安全が確保できていればいいのかなあとも思います。

 それはそれとして、やはりルソン島セブ島も日本人が進出してきているし、韓国人や中国人もたくさんいます。なんとく韓国の人が多いです。ただ、フィリピン人はイスラム教徒、中国(中国人が嫌いなわけではないみたい)、韓国人の順番に嫌いなので、割と険悪なようです。最近ではセブに英語の勉強に行く人もたくさんいますね。確かにフィリピンで飯食ってるとアメリカとかに留学してたであろうシュッとしたおねーさんがアメリカ人みたいな英語で応対してくるので結構ビビります。

 セブはというと、中心街のショッピングモールは圧巻です。が、まあ小ぎれいな感じはあまりしない。それと少し離れたところに繁華街があって、繁華街と中心街を分けるのは察してほしい。で、繁華街はマンゴーストリートというのだけれど、そこは日本人向けのクラブと、韓国人向けのクラブと、欧州系の人の行くクラブが分かれてて、いい感じに案内してくれます。個人的には本当に音楽と酒だけのクラブに行きたいのだけれど、どうしても必ずおねーちゃんが付いてきて、別にそういうのいいんだけどなあと辟易することもある。好きな人は好きですけどね。あるときマンゴーストリートに一緒に行った若い男の子はすごいはしゃいでた。

 そういう女遊びよりは個人的にはバナナとかマンゴーとかパイナップルが氏ぬほど上手いことをここで強調しておきたい。どのくらいうまいかというと、日本に帰ると、日本で食べるバナナとかパイナップルを同じ食べ物と認識できなくなるくらいうまい。やっぱり木で熟した完熟の果物は現地でしかたべれなくて、そして強烈にうまい。これだけのために金を払ってもそれはそれで価値があることだと思う。バナナなんかはむいたときの色が違くて、日本で食べるバナナは身が白いけど、黄色くて、味が濃い。他にも炊いて食べる用のバナナとか、ある。

 

フィリピンとイスラム

 南部ミンダナオのダバオ市はフィピリン第二の都市で、そこからブチュアンとか、スリガオとかいうミンダナオ島内の代表的な都市があります。これらの都市は島の東側にあります。一方で、西側はというと、あからさまにイスラム風の名前の街もあれば、スペイン植民地時代のスペイン語風の名前の街もあります。そういう街は大体今はイスラム教徒の街になっていて、キリスト教徒にとっては危険な街なんだそう。

 で、ミンダナオもイスラム圏以外は安全かというと、そうでもなくて、ダバオは、ダバオ出身者に言わせるとマニラより安全だっていうけど、そうでない人は、ダバオもマニラも同じようなもんだとも言います。なので、もともとミンダナオ自体があまり治安がいいわけでもないみたい。

 そして、それらの騒擾は貧しいイスラム教徒がインドネシアにそそのかされてやっているというように思っている節があるみたいで、必ずインドネシアとセットでイスラム教の脅威とミンダナオの治安の悪さが引き合いに出される。武力衝突も大体いつも起こっていて、インドネシア自体も領土的野心を隠さないので、割とイスラム教徒はフィリピンの中では形見が狭いのだと思う。

 ただ、ここ最近はルソン島でもイスラムの人を見るようにもなった。必ずしも街に溶け込んでる様子もなく、イスラムの人はイスラムの人でまとまってこじんまりと生活してるようにも見える。こんな風に歴史的な経緯からも地理的にもイスラムを脅威と捉えながらもやってるみたいです。

 ちなみに今回ISに占拠されたマラウィという街はどうも地図を見るにミンダナオの西半分側にあり、イスラム教徒が支配的な地域でもあり、反政府組織の活動が活発な地域でもあったようにも見えます。これとISが合流していよいよ活動を活発化されているということでしょうか。何れにしてもここまでくると日本の喉元にも近いこともあり、そろそろ気にしていかないといけない気もします。