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シジミの味噌汁と俺

昔話 家族

 うちの父は江戸っ子として僕を教育したかったらしく、蕎麦の食い方、寿司の食い方には兎角五月蝿かった。まだ生きてるけど。

 蕎麦は数本掬って、汁に少しだけつけてさっと食うとか、寿司も箸で食うなぞ野暮の極みであると、箸で寿司を食えるようになった僕に言ったりしていた。父親からちゃんと受けた教育といえば、それに付け加えて粋を説くのは野暮とか、ケチ臭いといわれるくらいなら氏んだ方がマシとか、列に並ぶのは田舎者とかそのくらいのものだった。まあ、勉強も教わったけど、その他のものは殆ど覚えていないので、教育として残っているのはその程度のもの。

 

 ある日祖母と父と僕の三人で食卓を囲んでいて、そのときに、シジミ汁に手を付け、シジミの身を一つ一つ箸ですくって食べていたら、祖母と父から、そんな貧乏人みたいなみっともない食い方をするなとか、そんな食いかたしたら礼儀作法を知らない田舎もんだと思われるというようなツッコミが入った。

 食べ物を粗末にするなとか、出されたものは全部食え、っていうか、米粒残すなっていわれてきたのになんでシジミは身を食わないのか衝撃だった。アサリは身まで食べるのに。と思ってたら、どうやら東京で流れてるシジミは身が小さくて、出汁をとるためのものだから食べなくて、アサリは身を食べるものだからというのが彼らのいい分だったらしい。

 っていうか、貧乏人とか、田舎もんとか、ひどい言いようで、なんかすげー差別意識だなあって思ったり思わなかったり。

 

 祖母はというと、昔はアサリ売りが、あさりー、しんじみーっていって売りにくるのが、あさりー、しんじめーって言ってるように聞こえて面白かったとか、アサリなんてどうせドブで掬ってきたようなものを値段つけて売るなんて因果な商売だとか言ってて、あの婆さまはシジミ売りに何か恨みでもあったのだろうか。