母の言葉

 祖父が祖母と母と叔母を残して過労で亡くなったのは、祖父が38歳のときだった。

 母が38歳になった夏に、祖父の墓参りをし、私はお父さんよりも長生きになってしまったと言った。

 そのとき私は10歳になるかならないかの頃で、弟4歳、妹は3歳だった。普段は気にも留めない母の言葉のうち覚えているいくつかの中の一つである。

 同じ時期に、昭和から平成に時代が変わり、生まれたばかりの妹を眺めながら、この子も生まれたばかりなのにもう古い時代の人になってしまったと私に言った。

 私が38歳のときに倅は5歳になっているはずだけれど、そのときにどのように生きているだろうか。そのときに同じように、祖父よりも長く生きてしまったと思うのだろうか。